PEOPLE*


Olivier Saillard


オリヴィエ・サイヤール/
ジェイエムウエストン アーティスティック・イメージ&カルチャー・ディレクター


オリヴィエ・サイヤール

歴史家的な感性で描き出す
老舗の新たな"家系図"とは?


青山・骨董通りにある〈ジェイエムウエストン〉の日本第1号店が、25年ぶりにリニューアルを果たした。手掛けたのは、昨年1月にアーティスティック・イメージ&カルチャー・ディレクターに就任したオリヴィェ・サイヤール。マルセイユのモード博物館のディレクターに加え、パリのガリエラ宮パリ市立モード美術館の館長を歴任してきた、服飾史の専門家だ。靴作りのスペシャリストではない彼は、はたしてどんなアプローチで老舗での靴作りに取り組んでいるのだろうか。

「〈ジェイエムウエストン〉には、合計11型のアイコンモデルが存在します。私の使命は、これらを掛け合わせながら"新しい子孫"を作ることだと思っています。家系図のように子どもをたくさん増やしていく感覚ですね。連綿と受け継がれてきた遺伝子を大切にしながら、ソールを厚くしたり、他モデルのステッチを使ってみたりといったアレンジを加えるわけです。長期的にはサンダルやスニーカーも含め、あらゆるタイプの靴を作りたいですね。もちろん、すべての靴が世界最高品質であることは大前提です」

スニーカーといえば、昨今の大流行は快適さが好まれる現代の価値観とも密接に結びついたもの。靴作りにおける快適さというものを、どう捉えているのか?

「その点については、とても真剣に考えています。〈ジェイエムウエストン〉にはラボがあるのですが、そこでまさに今、"新しい子孫"を軽量化するための研究を行っています。見た目はクラシックでありながら、かつてないほど軽やかな靴。アイコンの派生モデルと同時に、そうした未来のアイコンになっていくような靴もラボから生み出していきます」

オリヴィエ・サイヤールという新しい遺伝子が加わることで、歴史あるシューズメゾンの未来にどんな家系図が描かれていくのか。楽しみで仕方がない。



〈ジェイエムウエストン〉

 

128年の歴史を持つフランスのシューズメゾン。自社タンナーを所有するほどの確かな生産体制を築き、ローファーの"180"に代表される名靴を生み出してきた。リニューアルした青山店は、オリヴィエ・サイヤールが手掛けた初のコンセプトショップとして話題に。芸術品のように展示された美しい靴とともに、彼の新作"180 シグニチャーローファートリプルソール"も並ぶ。


写真=正重智生 文=遠藤 匠

2019-03-29