PEOPLE*


俳優には、自分のキャリアを定義するひとつの役というのがある。
それはハムレットかもしれないし、マクベスなのかもしれない。
僕にとっては、ずっと前から、デッドプールだった


ライアン・レイノルズ


ライアン・レイノルズ

特別華やかでもないのに、なぜかモテるヤツ。俳優ライアン・レイノルズは、ずっとそんな存在だった。スカーレット・ヨハンソンが最高にホットだった頃に、彼女を妻にしてみせたのも彼なら、その前の婚約者はアラニス・モリセット。どちらも、米『ピープル』誌から“生存する最もセクシーな男”に選ばれるより前の話である。

バンクーバー出身。カナダの若者向けテレビドラマでデビューし、ハリウッドに進出してからは、小粒なコメディやホラーが続いた。スーパーヒーロー映画の主役をはじめて獲得して注目されたのは2008年のこと。だが、その映画『グリーン・ランタン』は、批評面でも興行成績でもがっかりの結果に終わってしまう。そこから、彼のキャリアもスランプに入ってしまった。

「だけど、『グリーン・ランタン』には、素敵な副産物もあったんだよね。僕には甥や姪がたくさんいるけど、公開前から彼らが知っている映画に出たのは、あれがはじめてだったんだよ。甥は、公開前からしょっちゅう映画のことを聞いてきた。グリーン・ランタンの指輪が欲しいと言われて、あげると約束したのに忘れていて。それを撮影終了直前に母が思い出させてくれて、あわてて小道具係にもらいに行ったりしたよ」

そんな彼は、2年前、別のスーパーヒーロー映画で見事なリベンジを果たした。『デッドプール』は、レイノルズが2004年から構想を抱いてきた情熱の1作。『ウルヴァリン:XMEN ZERO』(2009)でも同じ役を演じたが、彼はそれより前から自分の手でこのキャラクターの映画を作ろうと、努力していたのである。

「俳優には、自分のキャリアを定義するひとつの役というのがある。それはハムレットかもしれないし、マクベスなのかもしれない。僕にとっては、ずっと前から、デッドプールだった。これ以上自分に向いている役はないと、僕にはわかっているんだ。できるものならあと50年でもデッドプールを演じたいよ。僕があまりにこのキャラクターに魂を注ぎこむから、『あなたは私のほかにデッドプールとも結婚しているみたいね』と妻によくからかわれたものさ」

その理解ある妻は、ブレイク・ライヴリー。彼女との出会いが『グリーン・ランタン』での共演だったことを思えば、あの映画が生んだ“副産物”は、かなり大きかったということになる。しかもライヴリーは、美しくて優しいだけでなくファッションセンスが抜群で、なにより料理がプロ級にうまい。過去に「料理はしない。自分がいかに下手くそか知っているから」と宣言したことのあるレイノルズの食生活は、いまや、相当に充実していることだろう。

だが、ファッションに関しては彼も負けていない。シンプルで洗練を感じさせる着こなしは、雑誌『Safari』などでも、たびたび取り上げられるほど。筆者がインタビューしたときに着ていたセーターは、「ミュンヘンにいたときにふらりと入った店で買ったもの」ということだった。

「こういうクラシックな1着は、絶対必要なアイテム。自分の着る服は、もちろん自分で選ぶさ。毎朝、誰かに『今日はこ れを着なさい』なんて服を並べられるなんて、考えられないね」。そう語るのは、お洒落に相当なこだわりがある証拠。ま た、今年もスイス時計の名門〈ピアジェ〉のアンバサダーに選出されている。普段からクラシックでエレガントな薄型時計をつけこなし、風格あふれる着こなしを披露しているのは実に彼らしい。

肉体を維持することも日頃から心がけている。だが、映画のためでない限り、必死になってワークアウトをすることはしない。『デッドプール』の撮影中も、「もう21歳じゃないし、ケガをしないようにするほうにもっと注意を払っていた。主演の僕がケガをしたら大変なことになる」というところは、さすがプロデューサーだ。「撮影がないときは、週4回くらい、最近はランニングをするね。前はあまりやらなかったけど、ストレス解消にもいいし。あとはウエイトトレーニング」

ライヴリーも2人めの娘を生んだと思ったらあっという間に体重を落としているし、夫婦仲良く、励まし合いながらワークアウトをしているのかもしれない。もっとも、『デッドプール』続編を撮り終わった今は、カラダ作りを少しさぼってもいい頃のはずだ。現在製作に入っている最新作はなんとポケモンの実写映画『Detective Pikachu』で、レイノルズのキャラクターはCGなのである。R指定の過激なジョークが売りのアクション映画の直後に、ファミリー向けの映画を選ぶあたりもまた、レイノルズという俳優の面白いところ。「自分ではない、別のキャラクターに溶けこんでしまう感覚が好き」という彼は、ピカチュウにどんな形で溶けこんで見せるのだろうか。



[PROFILE]
1976年カナダ、バンクーバー生まれ。4人兄弟の末っ子。カナダのテレビドラマ、アメリカのシットコム番組を経て、ロマンチックコメディ映画『Definitely, Maybe(日本未公開)』、ホラー映画『悪魔の棲む家』、犯罪アクション映画『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』などに出演。代表作に『あなたは私の婿になる』『リミット』など。自らプロデュースした映画『デッドプール』は、全世界で7億8000万ドルを売り上げる大ヒットとなる。タイトル未定のこの続編は、今年5月全米公開予定。


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文=猿渡由記

2018-03-13