PEOPLE*


より脅威を感じる時代であればあるほど、
混沌としていればいるほど、
ヒーローに救ってもらいたいという思いが強くなる


ベン・アフレック



幼馴染みのマット・デイモンとともに脚本を書いた『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』。これがアカデミー賞脚本賞を受賞したのが1998年。授賞式の壇上で、初々しく喜びを爆発させていたのは25歳のときだった。それ以来、ベン・アフレックは様々な作品に出演し、目利きの映画人としてプロデュース業もこなす。また、アカデミー賞作品賞受賞作『アルゴ』をはじめとする監督作でも高い評価を得てきた。そんなハリウッドスターとしてあらゆる経験を積んできた彼でさえも、挑むことに格別な意味を持つ役があるという。それが、アメコミから誕生したスーパーヒーローとして長く愛され、映画やドラマの主人公にもなってきたバットマンだ。約1年半前に日本公開された『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』ではじめてバットマンを演じ、今また再び『ジャスティス・リーグ』で同役を演じている。アフレックは「バットマンはあまりにアイコニックで、素晴らしいキャラクターだからね」と胸の内を明かす。「だからこそ、これまでにもバットマンが登場する作品が多く生み出され、様々な役者がバットマンを演じる機会を与えられてきた。僕としても、この素晴らしいキャラクターを再び演じられることに感謝しているんだ。しかも、『ジャスティス・リーグ』での彼は、『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』のときとは明らかに異なる一面を見せる。前作で彼はスーパーマンと対峙するという展開上、怒りや憤りといった感情に心を支配されていたけれど、今回はもっと伝統的なバットマンが見られるよ。皮肉たっぷりのユーモアも、世界一の探偵という要素もね。慣れ親しんだ形のバットマンを目にすることに心地よさを感じる観客もいるだろう。僕自身もバットマンの人となりをオリジナルに沿って描くことに楽しさとやりがいを感じている」

アフレックのいう「伝統的なバットマン」は、世界有数の富豪ブルース・ウェインとして名を馳せる一方、莫大な資産と強靭な肉体を駆使して秘密裏に悪と戦ってきた。しかし『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』では、地球を愛するヒーロー同士でありながら、互いの存在に疑念を抱くスーパーマン(ヘンリー・カヴィル)と対立。『ジャスティス・リーグ』は、その後の世界が舞台となる。しかも、ヒーローとヒーローの対立から一転、今回のバットマンは地球滅亡の危機を察知し、ともに戦うヒーローたちをスカウトしてチームを結成。集められたメンバーは、最強の美女戦士ワンダーウーマン(ガル・ガドット)、時空を超えるほどの超高速移動パワーを持つフラッシュ(エズラ・ミラー)、水中で強大な力を発揮するアクアマン(ジェイソン・モモア)、世界中のあらゆるデータにリンクできるサイボーグ(レイ・フィッシャー)の4人。チームの紅一点、ワンダーウーマンに関しては、すでに彼女を主人公にした『ワンダーウーマン』が公開され、世界中で大ヒットを記録したことも記憶に新しいところ。

「このチームは境遇も出身も全く異なるメンバーで構成されている。その根底には、多国間主義の象徴という考えがあると思うんだ。善を守る共通の目的のために、年齢層も違えば、性別も背景も違う人々が集まり、まとまっていく。ヒーロー映画、その中でも特にヒーローがグループとなって戦う映画は、現実世界が脅威を感じる時代であればあるほど、混沌としていればいるほど魅力的に感じられるものなんじゃないかな。ヒーロー、救世主、伝説的なキャラクターたちに窮地から救ってもらいたいという思いが、人々の間で強まっているだろうからね。けれど、僕たちの現実世界では、必ずしもそうはいかないかもしれない」

慈善活動に熱心で、政界進出もたびたび噂される立場であるだけに真意を探りたくなる言葉でもある。でも今は役者としてヒーローと化し、強大な敵に立ち向かって世界を救うことに楽しみを見出している様子。ただ、「衣装を着ていると、たまにすごく暑くなってしまう。それだけはつらいことだといえるかもしれないね」とも。確かに、バットマンが身につける"バットスーツ"は、涼しさや快適さとはかけ離れていそうだ。

「でも、クールなガジェットなしのバットマンなんてあり得ないからね。スーツ以外にもバットモービル、バットプレーン、グラップルガンなど、それらは観客がバットマンに必ず期待することだし、僕自身の楽しみのひとつでもある。かつてジャック・ニコルソンが演じたジョーカー(バットマンの敵)が『こんなにもよいおもちゃを奴はどこから手に入れるんだ?』といっていたと思うのだけど、そのとおりだよね(笑)。でも、バットマンにはワンダーウーマンのような超能力がないから、クールなガジェットの力が必要なんだ」

『ジャスティス・リーグ』の後には、バットマンのみを主人公にした映画や『ジャスティス・リーグ』の第2作も製作予定。ベン・アフレックがバットマンを演じる日々はまだまだ続く。その一方、昨年手掛けた『夜に生きる』に続く監督作やほかのキャラクターを演じる出演作も当然のことながら控えている。そんな中でバットマンを演じ続けること、とりわけ『ジャスティス・リーグ』のバットマンを演じることは、「ある意味、バケーションのようなもの」だという。

「バットマン単体の映画について今はまだなにもいえないのだけど、少なくとも『ジャスティス・リーグ』は楽しい気分になれる作品で、アドベンチャーがあり、モンスターも登場する。主役として自分1人が映画を背負うのではなく、素晴らしい主演俳優5人で素晴らしい物語を語るという点でも楽しい。だから、撮影現場に毎日やってくるのが嬉しかったし、大がかりなセットと様々なものに囲まれ、常に新しい発見があった。日々探検しているという感じだったね。この探検を、まだまだ続けていきたいと思っているよ」


  • 『Justice League』
    バットマンやワンダーウーマンなど、DCコミックスのス ーパーヒーローたちが結集するアクション大作。孤高のヒ ーロー、バットマンとして生きる大富豪ブルース・ウェイン (アフレック)が、迫りくる強大な敵に立ち向かうべく仲間 を集め、「ジャスティス・リーグ」を結成する。


[PROFILE]
1972年、米・カリフォルニア州生まれ。マサチューセッツ州で育ち、近所に住んでいたマット・デイモンと友情を深める。9歳の頃からはじめた俳優活動が日の目を見ない中、デイモンと共同で脚本を執筆した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』がアカデミー賞脚本賞を受賞。俳優としても一躍ブレイクし、『アルマゲドン』、『パール・ハーバー』などの大作に出演する。近年は監督としての評価も高く、『アルゴ』でアカデミー賞作品賞を受賞。弟ケイシー・アフレックも俳優として活躍中。


写真=Norman Jean Roy 文=渡邉ひかる

2017-10-31