オーストラリアで食といえばオージービーフくらいでしょ? なんて話は、過去のこと。いまや、世界に誇る美食の新興国として、フーディたちからも注目を集めている。なかでもメルボルンは、豪州のイメージが変わるほど質やセンスの高いレストランが目白押しだ。
世界の美味しい都市について問われると、私は、そのひとつにメルボルンを挙げることが多い。大抵、意外な顔をされるのが常であるが、この数年の間に、劇的にレストランが美味しくなった都市のひとつとして、世界のフーディたちが注目するのが、メルボルンなのである。大きな転機は、2017年だろうか。同年"世界ベストレストラン50"のアワードが、はじめてメルボルンで開催され、世界中の食の専門家たちに、この都市の美食のクオリティの高さが周知されることになった。
その象徴は、メルボルン郊外にある小さな美食レストラン〈アッティカ〉だろう。〈アッティカ〉は、その"世界ベストレストラン50"で、2013年から6年連続でランクインする実力店であるが、個人的にも、この店を訪れるためだけに豪州を訪れたいと強く思う、素晴らしいレストランだ。シェフのベン・シューリーは、ワラビーやカンガルー、あるいはアボリジニーが伝統的に食べてきたブッシュ・タッカーなど、オーストラリア固有の動植物を積極的に食材に使い、見たことも食べたこともない味わいを提供する。その未体験の美味しさだけでなく、オーストラリアという国そのものの多様性や豊かさを、料理を通じて体験できる稀有なレストランなのである。そもそも、豪州は固有の動植物が多く、その多様性こそがこの国の魅力なのだ。
多様性という意味でいえば、メルボルンは多様な人種や民族が混じりあって、独特な歴史を積み重ねた国際都市である。それはレストランも然り。和洋中、エスニックなどジャンルに囚われない、自由でイノベーティブな雰囲気の店が多いのが大きな魅力である。今回、フーディに人気の3店をご紹介しておくが、ほかにもユニークで楽しいお店が目白押しなので、是非ご自身で開拓してほしいと思う。ちなみに、メルボルン郊外には、豪州を象徴するワイン産地、ヤラバレーがあるが、安くて美味しいワインが楽しめるのも、この街のレストランの魅力である。
先住民アボリジニーの食文化をひもといたり、カンガルーやエミューといった固有動物など、豪州固有の食材を芸術といえるような料理に仕立てる、天才的な料理人ベン・シューリー。食材が珍しいだけでなく、どの皿もとてつもなく旨くそして見た目も美しい。
ADDRESS | 74 Glen Eira Road, Ripponlea, VIC 3185 |
OPEN | 18:00〜19:30(予約可能な時間帯)、日・月曜休 |
PHONE | +61-3-9530-0111 |
WEBSITE | https://www.attica.com.au/ |
オーナーシェフの、Teage Ezardの名前を冠したこの店は開店から20年を迎え、メルボルンを代表する美食レストランとしてつとに有名である。世界各国の料理のエッセンスをいち早く取り入れた"オーストラリアフリースタイル"という料理ジャンルを生み出した先駆的な存在だ。
ADDRESS | 187 Flinders Lane Melbourne, VIC 3000 |
OPEN | 12:00〜14:30、18:00〜22:30、不定休 |
PHONE | +61-3-9639-6811 |
WEBSITE | https://www.ezard.com.au/ |
店内には様々な自動販売機があったり、東京の下町の飲食街をイメージしたような、ポップ感ある不思議な雰囲気のレストランである。料理は、日本風あり韓国風ありで、どれも手軽で美味しい。立地もいいので、メルボルン観光の合間に、気軽に立ち寄ってほしい。
ADDRESS | 180 Flinders Lane, Melbourne, VIC 3000 |
OPEN | 12:00〜23:00、不定休 |
PHONE | +61-3-9650-8688 |
WEBSITE | https://supernormal.net.au/ |
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より“世界ベストレストラン50”の日本評議委員長も務める。さらに、グラナパダーノとパルマハムの親善大使に任命されている。
2020-04-15