NYのレストランと聞いて、美味しいものを期待する人は少ないかもしれない。ところが、今は世界的な美食ブームを反映し、様々なジャンルのレストランが誕生。美食を目的に訪れるフーディが増えつつある。今回は異なるジャンルの3店をご紹介しながら、NYの最旬レストラン事情をレポートする。
NYが美食の都市として注目されるようになったひとつのきっかけは、2016年のこと。この年に、私が日本チェアマンを務める〝世界ベストレストラン50〞のアワードがNYで初開催されたのであった。その翌年の同アワードでは〈イレブン・マジソン・パーク〉が初の世界一に輝き、美食都市としてフーディたちに認知されるようになった。NYの魅力は、世界各国の伝統的な料理だけでなく、実験的でイノベーティブなレストランを受け入れる風土があることだろう。今回紹介するNY郊外の〈ブルーヒル・アット・ストーンバーンズ〉などはその筆頭だろうか。このレストランは、いわゆるファーム・トウ・テーブル(農場から食卓へ)と呼ばれる農場直結型レストランのお手本として知られているが、シェフのダン・バーバーは、食材の自家栽培、自家飼育による味や鮮度の追究だけでなく、土壌や生産方法、生育環境、あるいはオリジナル・シードの研究など、食に関わる社会問題をレストランから発信する先駆者としても高く評価されている。美味しく雰囲気がいいだけでなく、〝美食の未来を考える〞うえでも知的な美食体験ができるに違いない。ちなみに、現在〝世界ベストレスラン50〞では、28位にランクインしている。
ジャンルは全く異なるが、マンハッタンの〈コスメ〉は、今までにないモダンなメキシコ料理店として人気急上昇である。この店は、今年の"世界ベストレストラン50"で23位に入賞したが、メキシコ人女性シェフのダニエラ・イネスは、同アワードの"女性シェフ賞"をダブル受賞した。メキシコ料理の知られざる魅力を体験するだけでなく、日本にはないダイニングの楽しさを演出するので、是非訪れてみてほしい。最後に、最近ドキュメンタリー映画にもなった、〈ザ・カーライル・ア・ローズウッド・ホテル〉のレストランは雰囲気、格式ともに申し分ないので、押さえの1店としてご紹介して締めくくろう。
シェフのダン・バーバーは、料理のクリエーションだけでなく社会活動家として高く評価されている。そのあたりは『食の未来のためのフィールドノート』(NTT出版)に詳しく書かれているので、ご興味のある方はご一読いただきたいが、機会があれば是非ご自身でレストランを訪ねてほしいと思う。
ADDRESS | 630 Bedford Rd. PocanticoHills, New York 10591 |
PHONE | +1 914-366-9600 |
WEBSITE | http://www.bluehillfarm.com/ |
メキシコ料理をイノベーティブな高級料理に仕立てた話題のお店。タコスなどメキシコの伝統料理をベースにした、ユニークな皿の数々は、ニューヨーカーたちにも大人気。店内はカジュアルな雰囲気でアラカルトでも注文できるので、グループで訪問するのもおすすめだ。
ADDRESS | 35 E. 21st St., New York, NY 10010 |
PHONE | +1 212-913-9659 |
WEB SITE | https://www.cosmenyc.com/ |
マンハッタンの〈ザ・カーライル・ア・ローズウッド・ホテル〉は、ハリウッド・スターや歴代米国大統領、英国王室の御用達ホテルとして知られるが、レストランは宿泊者以外でも利用できる。料理はクラシックなフランス料理。セレブリティ気分も味わえる。
ADDRESS | 35 E. 76th St., New York, NY 10021 |
PHONE | +1 212-744-1600 |
WEB SITE | http://www.thecarlyle.com/ |
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より"世界ベストレストラン50"の日本評議委員長も務める。さらに、グラナパダーノとパルマハムの親善大使に任命されている。
2019-10-25