そもそも台北はグルメな土地として知れてはいたが、外食はローカルフードや屋台が中心で、いわゆるガストロノミー(美食)レストランは、ほぼ皆無だった。それが、ここ近年は世界の美食ブームの波を受けて、台北独自のイノベーティブなレストランが続々と誕生している。今回は、その中でも注目の店をご紹介し、その魅力をお伝えする
台北で美食レストランのブームがはじまったのは、今から約5年ほど前だろうか。台北に2014年にオープンした〈RAW(ロウ)〉は、世界的なシェフ、アンドレ・チャンがプロデュースしたこともあり、瞬く間に予約困難店となった。また、この年、同じビルに〈日本料理 龍吟〉の支店、〈祥雲龍吟〉も誕生し、台湾は美食のフロンティアとして、世界中のフーディたちから注目されることになった。その台湾では若手シェフを中心に、美食の第2ウェイブともいえる出店ラッシュが続いている。その筆頭は、今年の"アジアのベストレストラン50"(以下アジアズ50)で、7位になった台北の〈MUME(ムメ)〉だろう。オーナーシェフのリッチー・リンは、台湾の食材にヨーロッパ仕込みの料理手法を加えた絵画的ともいえる料理で、フーディたちを唸らせている。同じく昨年末に台北にオープンしたばかりの〈logy(ロジー)〉も特筆に値する料理を提供する。この店は、東京・青山のレストラン〈フロリレージュ〉の姉妹店だが、シェフの田原諒悟は、その〈フロリレージュ〉の川手寛康のもとでスーシェフを務め、この店の料理長に抜擢されると、開店わずか5カ月でミシュランの星を獲得。すでに予約困難店となりつつある。10皿あまりのコース料理のほとんどは、台湾の素材を使い、台湾でしか味わえない美味しさ、楽しさを追求する。ちなみに、台北だけでなく台中にも注目のレストランがある。今年アジアズ50で注目のレストラン賞に選ばれた、台中の〈JLStudio(ジェーエル スタジオ)〉である。この店は、シンガポールで育ったシェフ、ジミー・リムによるモダン・アジアン料理店。東南アジア諸国の伝統料理を台湾の素材に融合して、茶目っ気に富んだ料理を作り出す。それでいて、味わいは本格派。台中にいながらアジア中を旅するような気分にさせてくれる。親日でも知られる台湾。その知られざる美食のトレンドもご自身で味わってほしい。
大安エリアにある〈ムメ〉。料理は「ほぼ台湾の素材にこだわっている」とシェフのリッチーは言う。たとえば、こちらは台湾産のトマトと台湾産小さなグリーンピースに、台湾で獲れた海老にトマトの出汁で仕上げたひと品。表面には、これも台湾で咲いているエディブル・フラワーを添えて、絵画的な表現に仕上げている。
ADDRESS | No. 28, Siwei Road, Da’an District,Taipei City, 台湾 106 |
PHONE | +886 2 2700 0901 |
WEBSITE | https://www.mume.tw |
日本で磨いたフランス料理の技法とエスプリで、台湾の素材や気候風土を生かした料理を作る。開店わずか5カ月で、ミシュラン台湾版の星を獲得した。ちなみに右の料理はホタテ貝に、台湾の素材の様々なフレーバーを組み合わせ、耽美的な味わいを構築。〈ロジー〉のスペシャリテのひと皿だが、新鮮な海鮮の魅力を知り尽くした北海道出身の田原シェフらしい料理である。
ADDRESS | No.6,Lane 109, Section 1,Anhe Road, Da’an District,Taipei City, 台湾106 |
hello@logy.tw | |
WEB SITE | https://logy.tw |
シンガポール育ちのジミーは、シンガポールの伝統料理をモダンにアレンジする。右の料理は牛肉を使ったスペシャリテ。添えられた緑色の素材は、東南アジアで広く料理に使われるサトー豆。シェフのジミーが子供の頃食べたサトー豆の懐かしい味わいを表現したという。
ADDRESS | No.689, Yifeng Rood, Setion 4,Nantun District, Taichung City, 台湾408 |
PHONE | +886 4 2380 3570 |
@jlstudiotaiwan |
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より"世界ベストレストラン50"の日本評議委員長も務める。さらに、グラナパダーノとパルマハムの親善大使に任命されている。
2019-09-13