マカオといえば、近年はコタイ地区のIR(統合型リゾート)の登場で観光産業の発展が目覚ましい。IRとは、カジノだけでなくホテルやショッピングモール、劇場や国際会議場などがある複合施設のこと。とりわけマカオのIRは、どこもレストランの質が極めて高い。今回はカジノだけではない美食のマカオの魅力をご紹介しよう。
マカオのグルメといえば、広東料理や福建料理に加え、旧宗主国のポルトガル料理の影響を受けた独自の料理が挙げられる。アジア海洋圏の交通の要所であることから、マラッカなどの交易でマレー系の料理やアフリカ系料理のエッセンスなども取り入れた、ユニークなフレーバーが特徴である。そうしたマカオの伝統的な料理は、今でも旧市街のあちこちのレストランで楽しむことができる。それはそれで魅力的なのだが、筆者が注目するのは、近年、発展著しい埋立地のコタイ地区にあるIRのレストランである。IRとは、日本では単なるカジノだと思う人が多いが、カジノを中心にホテルやショッピングモールや劇場、そしてレストランなどの統合型リゾートのことだ。むしろIRの老舗のラスベガスでは、カジノ以外の売り上げのほうが多いというのが現状。日本でも法整備が着々と進んでいるが、IRはカジノをやらない人も存分に楽しめる施設であることを、今一度理解する必要があると思う。観光誘致のキーコンテンツになるというメリットも含めてだ。その意味でマカオのIRのレストランは特筆に値すると思う。どの施設も豊富な資金と深い食文化を背景に、ユニークで質の高いレストランが目白押しだからである。
折しも、今年の3月には"アジアベストレストラン50"の2019年度のアワードが、マカオのIRのウィン・リゾーツで開催されたばかり。これは、マカオ政府観光局がIRのレストランの魅力を発信するために誘致したものであった。今回は、筆者の独断で、3店舗をご紹介しておくが、これ以外でも、多種多様なレストランがひしめき合っているので、カジノ以外のIRの魅力を知る、という意味でも是非一度訪れてほしいと思う。日本からは、マカオ航空の直行便のほか、昨年末に香港とマカオを結ぶ海上橋、港珠澳大橋が開通したばかりだから、香港経由のアクセスがしやすくなっているというのも魅力だ。
こちらは、アジアを代表するスターシェフ、アンドレ・チャンが、ウィン・パレス内に新たに立ち上げたモダンな四川料理店。アンドレは、フランスの名店で修業を積み、シンガポールのレストランで大成功を収めた。だが、その店を閉め、その後の動向が注目されていた。そんな中、新たなクリエイションの舞台の1つがここ。今度は、四川料理をテーマに、彼らしい独自の創作料理を提供している。
ADDRESS | Wynn Palace Macau Av. da Nave Desportiva,MO Avenida Da Nave Desportiva Cotai |
PHONE | +853-8889-8889 |
ウィン・リゾーツの中にあるこの店は、テーブル席のほかに寿司カウンターなども配し、豊富なメニューから自由なスタイルで日本料理を楽しめる趣向。マカオにいながら、質の高い日本料理や日本酒が味わえるのは嬉しい。贅を尽くしたユニークなデザイン空間も楽しい。
ADDRESS | Wynn Macau MacauR. Cidade de Sintra,MO Rua Cidade deSintra NAPE |
PHONE | +853-8986-3663 |
こちらは、昨年オープンしたばかりのホテル、モーフィアスの中のモダン中華。このホテルは鬼才ザハ・ハディッドが設計したことでも話題だが、この店内のデザインもザハが担当した。その空間で食すこと自体もエンターテイメントだが、料理の数々も繊細かつ創意にあふれていて美味しい。
ADDRESS | Morpheus at City of Dreams,Estr do Istmo, Cotai |
PHONE | +853-8868-3446 |
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より"世界ベストレストラン50"の日本評議委員長も務める。さらに、グラナパダーノとパルマハムの親善大使に任命されている。
2019-05-31