欧州に拠点を置くデザイナーに「エレガンスとはなにか?」と聞いたことがある。返ってきた答えがこうだ。「雑然としたものはエレガントではない。シンプルで無駄のない様。もちろん美しくなくてはいけない」と。腕時計でいうと、ドレスウォッチがエレガンスを宿すもの。なかでも薄型のタイプはまさにエレガンスの極み。普段はカフスの中に隠れ、座ってテーブルに腕を置いたりしたときに顔を出す。逆にいくら高級ブランドの時計をつけても、これみよがしなつけこなしは、ビジネスシーンでは野暮というものだろう。本当にいい刀は鞘に入っているもの。本当にエレガントで上質な時計は、カフスの中の収まりがいい。
アメリカ最高峰のジュエラー&ウォッチメイカー〈ハリー・ウィンストン〉。このブランドがフォーマルな装いを楽しむ男性のために作った薄型ドレスウォッチは、とにかくシンプルな美しさを追求したもの。サンバースト仕上げの文字盤は見た目には控えめ。だが光が当たると、その角度に応じ、文字盤の中心部から外周部に向かって多彩に煌めいて、手元に華を添えてくれる。また、ニューヨー ク5番街にある〈ハリー・ウィンストン〉本店のファサードを象った造形がリュウズ部分のベゼルに施され、〈ハリー・ウィンストン〉のウォッチであることをさりげなく、だがしっかりと主張。ケースと同じホワイトゴールド素材の植字インデックス、針と文字盤のサイズバランスも絶妙。カジュアル使いでも主張しすぎない確かな存在感で、大人の時間を優雅にドレスアップしてくれる。
レディスはもちろん、メンズウォッチでも20世紀の初頭から現在まで、常にトレンドセッターとして頂点に君臨する〈カルティエ〉。時代を超えて愛される定番コレクションは多数。なかでも様々なスタイルで時計好きを魅了するのが、第一次大戦に登場した戦車(タンク)からデザインの着想を得たというドレスウォッチ“タンク”。そしてこの冬、その伝説のタイムピースのひとつが、約1世紀の時を超えて甦った。それが右の“タンクサントレ”。1980年代に誕生したレクタンギュラー(角型)モデルの定番“タンク アメリカン”の原型にして、伝説のミュージカルスター、フレッド・アステアも愛したという逸話を持つ。縦に長いケースだが、腕のカーブに沿うようになめらかな曲線を描いているため、つけ心地が素晴らしい。是非カフスの中に忍ばせて、エレガンスを語ってほしい。
熱心な時計コレクターの多くが、アンティークウォッチの世界に魅せられたきっかけとして挙げるのが、〈パテック フィリップ〉の男性用ドレスウォッチ“Ref.96”。そして、そのDNAを受け継ぐのがこの“Ref.5196”。ちなみに“Ref.96”は、1932年に誕生し1970年代初頭まで作り続けられた名作。バーインデックスとシャープなドフィーヌ針で構成される、完璧なバランスを持つシンプルな文字盤。カナと呼ばれる小さな歯車の歯のひとつひとつまで磨き上げた宝石のように美しいムーブメント。時計関係者の間では“クンロク”と呼ばれ、今でも圧倒的な人気を誇っている。その一方で“Ref.5196”は、時計界でも最も厳しい品質精度基準“パテック フィリップ・シール”が保証する機械式モデルとしては、最高峰の精度を誇るもの。これこそ世代を超えて受け継ぐ価値のある逸品だ。
時計愛好家が絶賛を惜しまないのが、薄型ドレスウォッチ“パトリモニー”コレクション。無駄のない美しさを、繊細かつ端正なラインで実現。そのスタイルは、スイス時計が世界の頂点を極めた1950年代にルーツを持つ。今回ご紹介する右の自動巻きモデルは、手巻きモデルと変わらず端正で美しいもの。彫刻加工が施された22Kゴールドローターの下で息づく、ジュネーブ・シールを取得した自動巻きムーブメントをケース裏から愛でられるのもこの腕時計の大きな楽しみのひとつだ。1755年にジュネーブで創業して以来、王侯貴族などのセレブを顧客に、250年以上も途絶えることなくエレガントな時計作りを続けてきた〈ヴァシュロン・コンスタンタン〉。あらゆるカテゴリーで最高の時計作りを展開するが、このパトリモニーこそ品格ある大人にぴったりなのは言うまでもない。
時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタが手掛け、1972年に誕生した〈オーデマ ピゲ〉“ロイヤル オーク”。そのスタイルから“ラグジュアリー・スポーツウォッチ”の元祖にして究極と讃えられ、時計通の間で通称“ジャンボ”の名で呼ばれる時計界の伝説だ。その初代モデルを忠実に復刻したのがこのモデル。スポーティにして繊細。腕に吸いつく極上のフィット感。その魅力は46年の時を経た今、さらに輝きを増すばかり。この革命的な腕時計の真価を毎日、それもゴールドの贅沢な輝きとともに楽しめるとしたらこれ以上の幸福はない。ブラックタイで正装したフォーマルなパーティから、Tシャツにジーンズのガーデンパーティまで、あらゆるシーンとファッションにフィットし、大人の男を輝かせる腕時計。ひと目でそれとわかるエッジーで美しいデザインも誇らしい。
極薄時計で名を馳せるのが〈ピアジェ〉。このモデルは、自動巻きでデイト付きの機械式腕時計としては最も薄く、ケース厚6.36㎜という世界記録を持つ。シンプルな文字盤、ケース裏から鑑賞できる22Kマイクロローター式巻き上げ機構を持つムーブメント。眺めれば眺めるほどに、それらの洗練された美しさに魅了されるはずだ。機械式ドレスウォッチの開発と製造には、特別な技術とノウハウ、卓越したセンスが必要だが、〈ピアジェ〉は1957年に機械の厚さわずか2㎜という伝説のムーブメント“キャリバー9P”を開発。以降、この分野で数々の世界記録を樹立した傑作モデルを世に送り出してきた。すべての部品を極限まで薄く小さくする技術。そしてそれを確実に動かすムーブメント。さらに、無駄を削ぎ落としたシンプルなデザイン。〈ピアジェ〉の時計は全く飽きることがない。
〈A.ランゲ&ゾーネ〉は特異な歴史を持つドイツの名門ブランド。19世紀から20世紀半ばまで、文化と工芸で世界をリードしたドイツ・ザクセン王国の宮廷時計師の伝統と技術を継承して1845年に創業。世界最高峰の地位を確立しながら2度の世界大戦と東西ドイツ分割に翻弄されて消えた悲劇を経験した。1990年のドイツ再統一を受けて1994年、創業者の末裔の悲願とともに奇跡の復活を遂げたこのブランド。一番の魅力は、機能でも美しさでも一切の妥協を許さないドイツ流のモノづくり哲学から生まれた、時計愛好家絶賛の機械式ムーブメント。それはケース厚わずか5.9㎜のこの手巻きモデルでも変わらない。ムーブメントは一度組み上げてから分解して装飾、再度組み上げる“二度組み”で完成。直径28㎜、厚さ2.9㎜のこの“宝石”は、ケース裏から鑑賞できる。
ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション 0120-346-376 |
カルティエ カスタマーサービスセンター 0120-301-757 |
パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109 |
ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755 |
ピアジェ コンタクトセンター 0120-73-1874 |
オーデマ ピゲ ジャパン 03-6830-0000 |
A.ランゲ&ゾーネ 03-4461-8080 |
文=渋谷康人
2018-11-30
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2020-06-05
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2020-05-29
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2020-05-29
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2020-04-15
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2020-04-15
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2020-04-15
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2020-04-15
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2020-04-15
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