FEATURE*


大人を魅了するのは
上質さだけではない。

価値ある腕時計には
ストーリーがある。


それなりのビジネスマンともなると、身なりには気を遣うはず。そして時計も然り。選んだ時計を見れば、その人の仕事に取り組む姿勢やライフスタイルが窺えるというものだ。今回ここでご紹介する時計は、その時計自体に物語が詰まったモデル。時を確認するたびに蘇るストーリーに、大人は思いを馳せる。


  • HARRY WINSTON
    [ハリー・ウィンストン]
    プロジェクト Z12

    デニムのように加工されたカーフスキンが、大人カジュアルにもよく馴染む。限定300本。10月発売予定。ケース径42.2㎜、自動巻き、ザリウムケース、カーフスキン+ラバーストラップ、10気圧防水。予定価格285万円(ハリー・ウィンストン/ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション)


    独自素材“ザリウム”で綴る
    クリエイティブな連作。


    新素材開発は、最近の時計業界の大きなテーマ。〈ハリー・ウィンストン〉は、ジルコニウムを主成分とし、耐久性、耐腐食性に優れ、軽量かつ低アレルギー性の特殊合金ザリウムを独自に開発。2004年からこの素材を採用したシリーズ“プロジェクト Z”をスタートさせ、斬新なデザインとともに、新素材開発においてもリーダー的な存在感を示してきた。第12作となる“プロジェクトZ12”では、これまでの同シリーズを象徴するオフセンターや非対称エレメントに代わり、同心円や対称性をデザインに導入。マンハッタンブリッジを彷彿とさせるセンターブリッジの上半分にジャンピング・レトログラード・アワー(時)、下半分にレトログラード・ミニッツ(分)を搭載。スポーティで遊び心あふれるアプローチの中にも、高級時計の文法がしっかりと押さえられている。


  • CARTIER
    [カルティエ]
    サントス ドゥ カルティエ LM

    写真のLMサイズのほか、35.1×41.9㎜のMMサイズの2サイズ展開。YGケース、PGケース、YGベゼル×SSケース仕様も用意される。ケースサイズ39.8×47.5㎜、自動巻き、SSケース&ブレス(レザーストラップも付属)、10気圧防水。74万円(カルティエ/カルティエ カスタマー サービスセンター) ©Cartier


    2人の紳士の友情から
    誕生した革新的な時計。


    航空界のパイオニアとして、その名を歴史に刻むアルベルト・サントス=デュモン。彼が、友人であるルイ・カルティエに「懐中時計では飛行中に時間を確認するのが困難。いい手段はないか?」と相談を持ちかけ、初の実用的な男性用腕時計が誕生する。それが1904年のこと。角型のフォルムや、あえてビスを見せるデザインなども革新性に満ちていた。そのDNAを受け継ぐ“サントス ドゥカルティエ”が、今年、大胆に生まれ変わった。ケースやベゼルが流麗なアールを描き、ブレスレットとの一体感を高めたことに加え、新開発の“クィックスイッチシステム”により、レザーストラップにも簡単に付け替えが可能に。ブレスレットのサイズも、ワンリンク単位で調整できるのは嬉しい。革新的にしてエレガントなライフスタイルを愛する男のための時計が、華麗に進化を遂げた。


  • PIAGET
    [ピアジェ]
    アルティプラノ アルティメート・オートマティック

    前面からムーブメントの動きが鑑賞できるデザインもユニーク。PGケースタイプも用意されており、こちらは予定価格312万5000円。ともに6月以降の発売予定。ケース径41㎜、自動巻き、WGケース、アリゲーターストラップ、2気圧防水。予定価格325万円(ピアジェ/ピアジェ コンタクトセンター)


    超薄型ドレスウォッチを
    リードしてきたプライド。


    1957年に超薄型の手巻きキャリバー9Pを世に送り出して以来、〈ピアジェ〉は薄型ドレスウォッチをリードし続けてきた。2014年には、ムーブメントとケースとを一体化した独自の構造による、厚さわずか3.65㎜の“アルティプラノ900P”を発表。機械式手巻き腕時計の世界最薄記録を塗り替えた。それから4年を経た今年、これを発展させた世界最薄自動巻き腕時計“アルティプラノ アルティメート・オートマティック”を発表。通常の自動巻きローターに代わり、文字盤外周をリング状の22K製ローターが回転してぜんまいを巻き上げる、ペリフェラルローター機構を採用し、ケース厚はわずか4.3㎜。シャツのカフスにひっかからない薄さだけではなく、エレガントな美しさも追求されている。超薄型のスペシャリストの歴史に、またひとつ"勲章"が加えられた。


  • A. LANGE & SÖHNE
    [A.ランゲ&ゾーネ]
    1815“ウォルター・ランゲ
    へのオマージュ”

    ブルースチールの針も美しいシンプルデザイン。YGケースモデル(27本限定)、WGケースモデル(145本限定)も用意。写真はピンクゴールドケースで限定90本。9月以降発売予定。ケース径40.5㎜、手巻き、PGケース、アリゲーターストラップ、3気圧防水。予定価格534万円(A.ランゲ&ゾーネ)


    伝わってくるのは
    ドイツの名門復興への思い。


    第二次大戦後、社業の中断を余儀なくされたドイツ時計の名門〈A.ランゲ&ゾーネ〉が、東西ドイツ統一を受けて復興を果たしたのは1990年のこと。その立役者で、創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲのひ孫に当たるウォルター・ランゲが、昨年1月17日この世を去った。その'92年の生涯を称え、1815“ウォルター・ランゲへのオマージュ”が発表された。1秒ごとにステップ運針する、スタート・ストップ機能付きジャンピングセコンドを備える。この複雑機構は、創業者F.A.ランゲが1867年に開発し、2代目のエミール・ランゲが実用化して懐中時計に搭載した、ランゲ家の歴史を象徴する機構のひとつ。シンプルな外観でありながら、技術的に意義のある複雑機構を搭載したモデルが、故人を偲ばせる。名門に受け継がれてきた技術力と復興への努力に思いを馳せたい。


  • GRAND SEIKO
    [グランド セイコー]
    メカニカルハイビート36000
    スペシャル規格

    写真の時計は、全国のグランドセイコーマスターショップでの取り扱いで限定150本。また、1500本限定のSSケース&ブレスタイプ(65万円)も発売中。ケース径39.5㎜、自動巻き、YGケース、クロコダイルストラップ、10気圧防水。280万円(グランドセイコー/セイコーウオッチお客様相談室)


    名作キャリバー誕生20周年を
    祝う“スペシャル”モデル。


    1960年の誕生以来、最高峰の腕時計を目指し進化を続けてきた〈グランドセイコー〉。その歴史の中で大きなエポックとなったのが、1998年の〈グランドセイコー〉専用キャリバー9Sの開発だった。そして今年、その20周年を記念するモデルが登場した。搭載されているのは、ハイビートの10振動キャリバー9S85。このブランドの規格では、スイスのクロノメーター検定を凌ぐ平均日差+5~-3秒(静的精度)と定められているが、この記念モデルではさらに精度を追求し平均日差+4~-2秒(静的精度)を実現。文字板上の“SPECIAL”の文字が誇らしくそれを物語る。初代9S搭載モデルを手掛け、ウォッチデザイナー初の現代の名工にして、黄綬褒章の栄誉にも輝いた小杉修弘による新ケースデザインも特筆に値する。日本の技術の粋を凝らした力作といっていい。


  • OMEGA
    [オメガ]
    スピードマスター ダークサイド
    オブ ザ ムーン アポロ8号

    ケースの裏蓋には、アポロ8号の司令船操縦士ジム・ラヴェルの言葉"WE'LLSEE YOU ON THE OTHER SIDE"が刻印されている。8月発売予定。ケース径44.25㎜、手巻き、ブラックセラミックケース、ブラックレザー×イエローラバーストラップ、50m防水。104万円(オメガ/オメガお客様センター)


    月の裏側へのロマンを
    かきたてる手巻きモデル。


    アポロ11号の宇宙飛行士たちとともに月面にたどりついた時計として、あまりにも有名な〈オメガ〉スピードマスター。毎年新作や限定モデルが登場し、伝説を今へと繋いでいる。今年は、人類史上はじめて月を周回する軌道に乗り、月の裏側を目撃したアポロ8号のミッションから50周年を記念する新作が登場。ケースは漆黒の宇宙空間を思わせるブラックセラミック製。オープンワーク文字盤から見えるブラックカラーの地板には、クレーター状の装飾を施し、月の表側を表現している。一方、シースルーバックでは、月の裏側がイメージされている。あえて超高耐磁性を誇る最新鋭の“マスタークロノメーターキャリバー”ではなく、月面に赴いた当時のキャリバーの流れを汲む、手巻きのCal.1869が搭載されていることも心憎い。月面へのロマンは、いまだに消えることはない。


  • BREITLING
    [ブライトリング]
    ナビタイマー 8 ユニタイム

    ジェットセッターにはとっても役立つ1本。文字盤カラーは写真のブラックとシルバーの2色展開で、今秋発売予定。プロフェッショナルⅢブレスレット仕様(91万円)も用意。ケース径43㎜、自動巻き、SSケース、アリゲーターストラップ、10気圧防水。88万円(ブライトリング/ブライトリング・ジャパン)


    パイロット時計の神髄を
    新生〈ブライトリング〉で味わう。


    時計の名門ブライトリング社が、生まれ変わった。英国の投資ファンド傘下となり、新たにジョージ・カーンをCEOに迎え、体制を一新。そして誕生した第1弾コレクションが“ナビタイマー 8”である。ナビタイマーといえば、回転計算尺を備えたウォッチとして認識されている向きもあるだろうが、この新作は1952年に初代ナビタイマーが誕生する以前の1930~'40年代の航空計器を着想源とする。ある意味、〈ブライトリング〉の歴史をさらに掘り下げたコレクションといえるだろう。その中で、この“ナビタイマー 8 ユニタイム”は、自社開発・製造のキャリバー、Cal.B35を搭載したワールドタイマー機能の1本。スポーティなテイストとクラシックなスマートさが絶妙に融合し、世界を舞台に活躍するビジネスマンの手元にもフィットしそうだ。




[INQUIRY]


カルティエ カスタマー サービスセンター 0120-301-757
ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション 0120-346-376
ピアジェ コンタクトセンター 0120-73-1874
A.ランゲ&ゾーネ 03-4461-8080
オメガお客様センター 03-5952-4400
セイコーウオッチお客様相談室 03-5159-5397
ブライトリング・ジャパン 03-3436-0011

文=まつあみ靖

2018-05-31






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