“奇想天外”と称されているホテルがある。思いも寄らない奇抜なアイデアで滞在ゲストを笑顔にしてしまう、そんな3軒をご紹介しよう。
コックピットスイートのベッドルームは、もちろん本物のコックピット。実際に操縦することはできないし、頭をぶつけそうな狭さだが、この空間を独占できるというだけで心が躍る。シャワールームとリビングルーム、ベランダもある
ADDRESS | Jumbovägen 4, SE-190 47 Stockholm Arlanda,Sweden |
TEL | +46-8-593-604-00 |
WEBSITE | www.jumbostay.com |
スウェーデンの首都にあるストックホルム・アーランダ国際空港。その敷地内になかなか離陸しない飛行機が駐機している。その巨体が空を飛ぶことは、もうない。実はこれ、本物の飛行機を使ったホテルなのだ。
この機体は“ジャンボジェット”という愛称で親しまれてきたB747。1976年から2002年まで、シンガポール航空、パンナム、エアアジア、トランスジェットなどのフライトで世界各地の空を飛んでいた。そのジャンボジェットが改装されて、2009年にホテルとしてオープンしたのだ。
客室数はスイート3室を含む33室。なかでもおすすめなのは、ジャンボジェットの2F部分を独占できるコックピットスイートだ。レセプションからはらせん階段で上る。コックピット部分がベッドルームで、現役時代のファーストクラスキャビンはリビングルームとなっている。機体のドアを開けると、そこにはボーディングブリッジではなくベランダがある。ベッドルームもシャワールームも天井がカーブしていて頭をぶつけそうになるが、機内と思えばそれも楽しいというものだ。
ほかの客室も、特殊な構造を最大限に生かしたユニークなデザインばかり。座席頭上の荷物入れをそのままロッカーとしていたり、小さなエンジンルームも幅いっぱいにベッドを置いて客室にしたり。車輪格納庫は外から直接入る客室となっている。スペースが限られているため、スイート以外のほとんどの客室はトイレとシャワーが共同だ。
館内にレストランはないが、カフェがあり、サンドイッチやサラダなど軽食が用意されている。朝食はコンチネンタルブレックファスト。朝食時に出会ったほかの滞在ゲストも笑顔にあふれていた。小さな子供連れの家族は、親のほうが子供よりも楽しんでいるかもしれないくらい楽しそうだ。
空港敷地内ということもあり、トランジットで数時間だけの利用もできる。空港ラウンジではなく本物の機内で過ごすというのも、世界でほかにない奇想天外なトランジット時間となるだろう。
外壁が石と植物で覆われている“モンタナ・マジカ・ロッジ”。よく見ると窓があるのでかろうじて人工物だということがわかる。冬は雪に覆われて銀世界になるという。1日に数回、上から水をしたたらせて草木に潤いを与えている
ADDRESS | Ruta 203, Panguipulli, Región de los Ríos, Selva Patagónia, Chilie |
TEL | +56-2-2887-3535 |
WEBSITE | huilohuilo.com/en |
南米パタゴニア地方のジャングルに、とんでもないホテルがある。外観からは人工物なのかすらよくわからない。が、よく見ると草木の間に窓が見える。
チリの首都サンチャゴから、国内線とクルマを乗り継いでいくパタゴニア地方。私営自然保護区の広大な敷地内に、遊び心たっぷりのホテルやゲストハウス、レンタルハウスが点在している。
取材で目指したのは“モンタナ・マジカ・ロッジ”。メイン施設にある3棟のホテルのうちのひとつで、“ボルケーノ”と呼ばれている。その愛称どおり外観はまるで火山のよう。円錐型の建物の外壁は石で覆われ、その隙間から草木がモジャモジャと生えている。客室は、らせん状に続く緩やかな階段に沿って並んでいる。
渡り廊下で繋がっている、通称“バオバブ”は、バオバブの木をイメージ。巨大な吹き抜けを囲んで円形に客室が並び、上階にいくほど広がっていてく。もうひとつの"フンギ"は、1Fがキノコの軸のように細く、2Fから上が客室だ。どれも外観は奇想天外だが、別棟にプールやスパもあるし、アクティビティも充実している森の総合リゾートだ。
岩山に囲まれた入江へのアクセスは3種類ある。急な坂道をジグザグに4WD車で上って降りるか。海から船で上陸するか。はたまた、岩山の上でクルマを降りてパラグライダーで飛ぶか。おすすめは? もちろん、パラグライダー!
ADDRESS | Zighy Bay Musandam Peninsula, Sultanate of Oman |
TEL | +968-2673-5555 |
japan@sixsenses.com(日本) | |
WEBSITE | jp.sixsenses.com |
リゾートへの到着は、これからはじまる滞在に想いを馳せてわくわくするとき。この瞬間を、エキサイティングな冒険にしたのが"シックスセンシズ ジギーベイ"だ。
アラブ首長国連邦のドバイからクルマで国境を越えてオマーンへ。街を抜け、荒涼とした大地を走り続けたクルマは、とある岩山の前で止まる。そしてゲートを抜けるとジグザグに岩山を上って行く。頂上付近で再び止まった。そこで待っていたのはパラグライダーのインストラクターだ。
簡単なブリーフィングの後にハーネスとヘルメットを身につけると、いきなりカラダが宙に浮いた。一気に空高く飛んだ後は、ビーチに向かってゆるゆると下降していく。その間10分ほど。風に乗 って飛ぶ爽快感や空から眺める風景を楽しんでいると、あっという間にビーチに降り立った。
チェックインだけでなく、岩山でのプライベートピクニックやダイビングなど、わくわくするアクティビティも多数用意されている。一戸独立型の客室は石を積み上げたオマーンの建築様式。最も小さなカテゴリーでも専有面積247㎡と広々としていて、全室プライベートプール付きだ。
写真・文=たかせ藍沙
2018-04-27