いくつになっても楽しさが尽きないのが、ジャケットのお洒落。ここぞという勝負どころでドレスアップするときの高揚感もひとしお。だが、肩の力を抜いて過ごす休日で、お洒落に着こなせたときに味わえる気分もまた、たまらなかったりする。さて、そんな最高の“普段着”はどれだろう。
アーティスティック・ディレクターのヴェロニク・ニシャニアンが掲げた今季のテーマは、“既成概念から解放された、自由で遊び心あふれるシルエット”。しなやかなテクニカル素材で仕立てた このジャケットの心地よさは、まさにそれを体現している。裏地や芯材を使っていないので、その着心地は軽やか。つい、テイラードジャケットを着ていることを忘れてしまいそうだ。それでいて、こんなにも洗練されたシルエットなのだから、いやはや脱帽。
エルメスジャポン 03-3569-3300 |
俳句の季語ではないが、ジャケットの素材によって季節感を表現する手法もある。それを、なんとも洒落たスタイルとして実践できるのがこの1着。ボディはホップサックと呼ばれる盛夏素材。ビールの原料を入れる麻袋のようにカゴの目状に織られた生地が視覚的にも爽やかだ。一方で、ふと首元に目を向けると、ピークドラペルがさりげない品格を印象づけている。ウールとシルクを混紡した麻仕立てというのも、にじみ出るリッチさの秘密のようだ。
ブルネロ クチネリ ジャパン 03-5276-8300 |
テイラードのお洒落は、ルールに則っても楽しいが、あえてそれを覆すともっと面白くなる。たとえば、ダブルブレステッドのジャケット。本来はビシッとキメるときに本領を発揮する服だが、写真のように力を抜いて着こなすとどうだろう。不思議とサマになり、新鮮さが伝わってくる。なんでもこの1着は、シルクリネンの服地に製品洗いをかけ、風合いを増しているという。極めて上質な素材をカジュアルダウンする贅沢な遊びがまた、“粋”に映る。
ラルフ ローレン 0120-3274-20 |
麻のジャケットは、独特のシワ感やリゾートっぽい佇まいが魅力だが、逆にそれが苦手という声もたまに聞く。都会で着るには、脱力しすぎて見えるのかもしれない。であれば、この1着はどうだろう。ロロ・ピアーナ社のブルーリネンは、涼しげにしてきちんと感も併せ持つ仕上がり。しかも、この“ミラノフィット”という型は、細身で着丈が短めというモダンなシルエット。麻ジャケットの“らしさ”と“らしくない”部分が同居したお洒落が新しい。
ブルックス ブラザーズ ジャパン 0120-185-718 |
写真=野口貴司 スタイリング=中川原 寛 ヘア&メイク= Hanjee 文=遠藤 匠 構成=大嶋慧子
2018-04-27