旅客機内に、ファーストクラスの上のクラスがあることをご存知だろうか。まるでホテルの客室のような、広々とした占有空間だ。その、知られざる雲の上の世界をご紹介しよう。
ヨーロッパやアメリカへ、片道100万円以上するフライトがある。ファーストクラスだ。チェックインも別格で、空港によってはファーストクラス専用ラウンジが用意されていることもある。ビジネスクラスの居住性が向上する中、ファーストクラスは、その遥か上で進化し続けている。まるで、各社が豪華さとアイデアを競っているかのようだ。
近年のファーストクラスの主流は、扉で仕切った半個室のシート。続いて、天井までのドアやカーテンで仕切る完全個室タイプも登場。完全にプライバシーが確保され、仕事に集中したり、さらにリラックスして休んだりできるようになったのだ。同行者と近くに座りたい場合は、中央の2席を選ぶこともできる。
ここまで豪華になったらその先はプライベートジェットしかないと思いきや、いい意味で予想を裏切る、"ファーストクラスの上のクラス"が出現している。それが、今回ご紹介するシンガポール航空の"スイート"とエティハド航空の"ザ・レジデンス"。どちらもファーストクラスとは別のクラス設定。もはや座席というよりも、客室と呼びたくなる広々とした占有空間がそこにある。
世界で最も豪華なフライトを運航しているのは、アラブ首長国連邦のアブダビを拠点とするエティハド航空。大型旅客機の中に、"ザ・レジデンス(邸宅)"がある。
同社のフライトには、扉がついた半個室の"ファーストスイート"、座席とベッドが分かれている"ファーストアパートメント"があるが、"ザ・レジデンス"はその上のカテゴリーとなる。この特別室はA380型機の"ファーストスイート"の前方に位置し、リビングルーム、ベッドルーム、エンスイートシャワールームの3室を占有。まさに"邸宅"という名にふさわしい、天空の別荘だ。
定員は一緒に旅行する2名。フライト中には、上の写真のバスローブのほかに就寝用ウエアも用意されている。さらに、専任のバトラー、シェフも同乗するという徹底ぶり。まるでトップセレブのプライベートジェットのような趣だ。
2019年4月現在、日本便には設定がないが、アブダビからロンドン、パリ、ニューヨークに飛ぶほか、7月からはソウルが加わる予定となっている。
エティハド航空 ETIHAD AIRWAYS www.etihad.com |
成田に8月からの運航が予定されているのは、シンガポール航空の新"スイート"。同社はこれまでも、中央2席がダブルベッドになる座席を世界ではじめて導入するなど、ラグジュアリーかつ画期的な座席で世界を驚かせてきた。
新"スイート"は、総革張りの座席とは別にフルフラットベッドがあり、進行方向に対して横向きという、かつてない斬新なデザインとなった。4年の歳月をかけて開発され、世界最大の総2階建て旅客機A380型機に、2017年12月から導入が開始された。シンガポール航空が、またしてもやってくれたというわけだ。
成田には4月28日からA380型機が再就航するが、7月までは従来型の"スイート"での運航となる。今年の夏旅は8月以降にして、就航したての新"スイート"に一番乗りしたい。
ちなみにシンガポール・チャンギ国際空港には、"プライベート・ルーム"がある。シンガポール航空のファーストクラス搭乗客のみが利用できるラウンジだ。新"スイート"と併せて楽しみたい。
シンガポール航空 SINGAPORE AIRLINES www.singaporeair.com |
文=たかせ藍沙
2019-03-29