見知らぬ土地へ行き、そこで新たな発見をする。これこそ旅の醍醐味。しかも、その場所が映画や小説などに関連したところで、その作品のサイドストーリーを知ったうえで訪れると感動はさらに深まる。そんな旅を是非。
[モニュメントバレー/アリゾナ]
見渡すかぎりの赤銅色の大地に、尖塔のようなビュートやテーブル状のメサと呼ばれる岩山。まるで記念碑のような岩の群れから名づけられたモニュメントバレーは、先住民ナバホ族の聖地だ。これまでアカデミー賞に5回も輝くロケ地のデビューには、ある夫婦の陰ながらの努力があった。
新天地を求めてやってきたグールディング夫妻は、ナバホ族との交易の場を設立。けれど世界恐慌のあおりで、資金繰りもままならなくなった。その頃、ジョン・フォード監督が次回作のロケ地を探しているとの話を聞き、夫妻はなけなしの$60とこの地の風景写真を手にハリウッドへ乗り込んだ。運よく面会ができたジョン・フォードはモニュメントバレーの景観をひと目で気に入り、2週間後には寝袋を携え、夫妻の元へ訪れたという。
夫婦の姓を冠したホテル〈グールディングス・ロッジ〉はモニュメントバレーが正面に広がる。ジョン・フォードは312号室、ジョン・ウェインは313号室。撮影を終えると、2人してテラスでカードゲームに興じたそう。きっとカードを切る手に迷ったときは、視線を上げ、この雄大な景色からヒントを得たことだろう。
#01この場所にゆかりのある人は?
1910 ~ 70年代にかけて、130本以上の作品を手掛けた映画監督。出世作となった西部劇から文芸作品まで、アメリカ映画史上を彩る。
#02ここで撮影された映画は?
ヘンリー・フォンダ扮するワイアットの決闘シーンは圧巻。『駅馬車』を“動”とするなら、こちらは“静”の西部劇の最高傑作。
グールディングス・ロッジ www.gouldings.com |
[ザ・ブランド/タヒチ]
“20世紀を代表する名優”と絶賛される一方で、トラブルメーカーとして敬遠された俳優マーロン・ブランド。当時、下着であったTシャツをファッションとして着こなし、背を丸めてモゾモゾと話す独特な演技など、型破りなスタイルはジェームズ・ディーンやエルビス・プレスリーなど後世のスターたちに多大な影響を与えた。
常に自分のポリシーを貫くブランドは、一筋縄ではいかない人生を送ることになったが、後年のターニングポイントとなった作品がタヒチで撮影を行った、『戦艦バウンティ』だろう。
タヒチで夢のような日々を送った戦艦バウンティ号の乗組員が、のちの航海で船長に反旗を翻した実話だ。映像ではヤシの密林に覆われた高峰と紺碧のラグーンが絶妙なコントラストをなし、美しい島の娘たちが艶めかしく踊る、地上の楽園が描かれている。この撮影で、ブランドは実際にタヒチに恋をした。
共演した娘は第3の妻となり、テティアロア環礁を購入。そしてその環礁のかつて暮らしていた場所に彼の理想を形にした、エコなリゾートを造り上げた。他界した今は、〈ザ・ブランド〉という新たなリゾートとして、彼のタヒチへのこだわりをここに継承している。
#01ココにゆかりのある人は?
『ゴッドファーザー』などが代表作の名優。リゾート経営のために高額のギャラを要求するも、共感する作品にはノーギャラでも出演。
#02このエリアが舞台の映画は?
ブライ船長率いるバウンティ号が食料補給のために寄港したタヒチで楽園を知り、出港後に反乱が起きる。美しい島と美女も見どころ。
ザ・ブランド www.thebrando.com |
文=古関千恵子
2017-10-31