有村 昆も驚いた
アカデミー賞裏話!
2月24日(日)にハリウッドのドルビー・シアターで開催される第91回アカデミー賞。全世界から注目を浴びる映画の祭典だけに、その存在は知らない人はいないはず。けれども、実は“世界3大映画祭”には入っていないのはご存知? そんなアカデミー賞にまつわるエピソードを映画コメンテーター有村 昆さんに語ってもらいました!
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そもそも、アカデミー賞は単なる納会だった⁉
『Safari Online』読者のみなさんはファッションがお好きなので、ミラノやパリなどで開催されるコレクションはご存知ですよね。あの映画版がアカデミー賞だと思ってください。よく、この時期になると「世界最大の映画の祭典」なんて、言葉を聞きますよね? けれどもアカデミー賞は、いわゆる“世界3大映画祭”には入っていないんです。
3大は、カンヌ、ベネチア、ベルリンを指していて、ステータスが高いとされている映画祭なんです。ただ、アカデミー賞は1929年にはじまっていて、3大映画祭より歴史が古い。今年でなんと第91回になるんです。それと、アカデミー賞は国際映画祭ではなく、あくまでもアメリカ映画のための賞です。アメリカには“映画はアメリカ文化だ”という気持ちが根強くあるようなんです。
歴史をさかのぼると、最初は映画関係者の納会みたいなものだったようです。業界の関係者が集まって「今年1年、お疲れさまでした!」って乾杯をするような質素な夕食会だったとか。それが世間の注目を集めるようになって、ショーアップされていったんです。
1929年に開催された第1回アカデミー賞の様子
最近はセレブが政治的発言をする場になっている
LGBT差別や女性のセクハラ問題。昨年は映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ問題があったので、特に#MeeToo運動が盛り上がりましたね。あとはなんといっても黒人差別。これは“白すぎるオスカー”といわれて批判されました。要するにあまりにも白人の俳優ばかりが賞を獲得していて、黒人俳優がノミネートすらされないと問題になったんです。
そこで約6000人のアカデミー会員に調査が入ったんです。そしたらアカデミー会員のほとんどが白人のお爺ちゃんだった、ということがわかったんですよ! これが本当に大問題になって、会員の構成比率を変えようということに。有色人種や女性、若い人を大勢招こうと。けれども、対策は追いついていないようですね。
ただ、候補に選ばれる作品がマイノリティや差別をテーマした作品が非常に多くなっています。年に一回のお祭りとして楽しめる反面、セレブリティが発する社会的なメッセージを受け取って、アメリカの世相を感じ取るのも楽しみ方の1つかもしれませんね。
アカデミー賞の授賞式で封筒を渡し間違えた!?
第89回のアカデミー賞で、大変なことになったのが作品賞発表時での出来事。ウォーレン・ビーティとフェイ・ダナウェイがプレゼンターだったのですが、『ムーンライト』という映画が受賞したのに、間違って『ラ・ラ・ランド』と発表しちゃったんです(笑)。
ウォーレン・ビーティももうお爺ちゃんなので、間違えたんじゃないかとか言われました。しかし実際は集計している会計事務所の人が、渡す封筒を間違えたようです。どうやらステージ裏でSNSに投稿していて気が散っていたのだとか。そんなことあるのかって話ですよね(笑)。
あと、聞いた話なんですけど、女優陣は裏では衣装合戦がすごいようです。映画『オーシャンズ8』でもネタにしていましたよね。女優陣は、色かぶりが絶対にNG。「この女優がこれを着るなら、私は違う色にする!」みたいな事前の読み合いがすごいのだとか。でも、女優はやっぱり目立つ色を着たいから、あえて偽の情報を流すこともあるそうですよ。
そういえば第86回のアカデミー賞授賞式では、司会を務めたエレン・デジェネレスが本番中にピザを注文しましたよね。檀上から。急にアカデミー賞の会場にピザ屋が出前を届けにきたんです。あれは演出ではなく、ガチで呼んだらしいんですよ。ブラッド・ピットが会場でお皿を配っていたのも印象的でした(笑)。その際に、みんなで撮ったセルフィの顔ぶれが豪華すぎると、300万回以上もリツイートされたそうです。
授賞式後の晩餐会で振る舞われたワインが買える!?
あと、これはこぼれ話ですけど、アカデミー賞でセレブが飲んだワインが販売されるようになったんです。僕も第85回のアカデミー賞授賞式の晩餐会で振る舞われたワインを持っています。“オノロベラ”というスペインのワインです。値段は、ボトル1本1000円ちょっとくらいで、それほど高くないんですよ。
ネット通販などで購入して、それを飲みながらアカデミー賞の授賞式を観る、なんて面白いですよね。ただ、日本時間だと25日(月)午前中なので、そこはご注意ください(笑)。
<プロフィール>
有村昆:Kon Arimura
1976年マレーシア生まれ。年間約500本の映画を鑑賞し、最新作からB級映画まで幅広い見識がある映画コメンテーター。妻は、元キャスターの丸岡いずみ。
photo by AFLO