アリコン・映画アワード2018! 【監督部門】
有村 昆が選ぶ“男の心情を描いたベスト監督”は誰だ!?
映画コメンテーター有村 昆さんが選ぶ“アリコン・アワード2018”! 第2回めの今回は、監督部門。数ある作品の中でも、“男の心情”を余すところなく表現した、という点でベストだった監督を決定。気になる、男を見事に描いたのは一体誰なのか!?
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“男の心情を見事に描いたベスト監督”は、『ボヘミアン・ラプソディー』のブライアン・シンガーです! 監督としてそんなに働いてないんですけどね(苦笑)。というのも、実はシンガーは撮影現場に途中から来なくなってしまったんです。そのため、別の人が引き継いで作品を完成させたんですよ。だから、この映画に関しては“ブライアン・シンガー”というのはユニット名ともいえますよね(笑)。
『ボヘミアン・ラプソディー』は、伝説のバンド“クイーン”のボーカル、フレディ・マーキュリーを描いた伝記映画です。『Safari Online』読者ならフレディ・マーキュリーと聞いてピンとくるでしょうが、彼を知らない若い年代の人たちが観ても「すごい!」と思うであろう力強いパフォーマンスと才能溢れる人間力に圧倒されました!
フレディはアフリカ生まれのインド育ち。そのため人種差別への意識が高いんです。そして、出っ歯という容姿や、LGBTという悩みも抱えるわけです。自身が虐げられてきたものを、作品のラスト21分間で爆発させるんですね。こういうセンシティブな部分を、赤裸々に描いたことも評価したいですね。
僕たちは男として、家庭でも会社でも日々戦っているじゃないですか? でも、この作品を観ると、あのフレディ・マーキュリーは、もっともっと大変なことがある中で戦っていたんだということがわかるわけですよ! だからこそ“俺たちは独りじゃないんだ”って、強く感じられたんですよね〜。そういう気持ちにさせる演出はお見事でした。観ている側の抑圧された気持ちさえも吹き飛ばして、爽快な気分にさせてくれたという意味で、監督賞はユニット名“ブライアン・シンガー”にあげたいですね。
ちなみに、ブライアン・シンガーは、過去にも、『X-MEN:アポカリプス』や『スーパーマン リターンズ』でも、撮影途中に失踪をしていました。つまりは、前科のある人なんですよね。だから降板話も驚くようなことではないのですが、ゴタゴタがあったにも関わらず、引き継いだ方がよくぞここまで素晴らしくまとめ上げたと思いますね。
ちなみにこちらも次点を明かすと、ギレルモ・デル・トロです。3月に公開された『シェイプ・オブ・ウォーター』は、トランプが大統領になったこの時代に、メキシコ移民が弾圧されてきた歴史を、半魚人への差別に置き換えたアイデアが素晴らしかったです!
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<プロフィール>
有村昆:Kon Arimura
1976年マレーシア生まれ。年間約500本の映画を鑑賞し、最新作からB級映画まで幅広い見識がある映画コメンテーター。妻は、元キャスターの丸岡いずみ。
photo by AFLO